あばばばば

え、なんだ? なんだ?

ゲームで遊びたいけど、めんどくさがりやが勇者に付ける名前か?

あばばばば」なんて、適当に付けた感が半端ないけど……。

それって、何?

実は、芥川龍之介の短編小説のタイトルだった。

まじか、「あばばばば」なんて小説があるんだ。知らなかった、初耳。

芥川龍之介の作品を知らないなんて、無知だなぁっていわれそうだけど……。仕方がないよなぁ、本当に初耳だし。

それにしても、すごいタイトルだなぁ。

芥川龍之介なら青空文庫にあるだろうと思って探したら、やはりあった。「あばばば」は1923年(大正12年)の作品。

小説の書き出しは、こうだった。

「保吉はずっと以前からこの店の主人を見知ってゐる。」

自分は小説の書き出しが、好きだ。書き出しのインパクトが強い小説は、即、その後どうなるんだろうって、引きずり込まれる。だから、やっぱり書き出しをチェックしてしまう。そして、それが面白かったら、読む。これは、大好きだ!!

書き出しの「この店」というのは、主人公の保吉の行きつけのたばこ屋だ。保吉はマッチを買いに行ったんだけど、店には売り物のマッチがなく、無愛想な店主は小さいマッチを差し出す。これは売り物じゃないからタダでやるよって保吉はいわれるが、申し訳ないから買うっていいだす。すると店主は、売り物じゃないからお金は受け取れんって話になり、じゃーついでだからタバコを買おうというと、店主は入り用じゃないものを無理に買うななど、押問答になるというたわいもない話から始まる……。

あばばばばは、その店の女の人が子供をあやしている声だった。勇者は、関係なかった(笑)。

作品は、芥川龍之介の晩年の作品で「保吉(やすきち)もの」といわれている一連の作品で、自叙伝的な小説なんだとか。うむ、こうしてなんでも調べてみるとやはり勉強になるなー。ちなみに代表作の「羅生門 」は1915年、「芋粥」は1916年の作品。

もっとも晩年といっても芥川龍之介は満36歳で自殺しているので、まだ若かったんですけどね。それにしても、こんな身近な話も書くんだなぁ。なんか面白いんですけど。

閑話休題。

小説の冒頭がすごいといったら、やっぱり夏目漱石の「吾輩は猫である」の書き出し、

「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」

は、インパクトしかないすごさだよな。誰もが知る超有名なこの書き出しは自分も究極だと思っている。

これよりすごい書き出しの小説はないだろうし、今後も出ないだろうってずっと思っていたけど……。

それが、自分がログインという雑誌の編集者時代に打ち破られた(当社比)。

自分、あるとき、まったく知らない女性読者からファンレターをもらったことがあったんだけど(自慢か)、この手紙の冒頭がすごかったのだ。

手紙の書き出しには、こう書かれていた。

「治りました。知ってんでしょ?」

うむ、まったく知らない女性だし、知るよしもないし、治ってないなと思った。

もうこれは漱石を越えたといっても過言ではないなと思った。

あばばばばから、そんなことを思い出した1日でした。関係ない話になっちゃったけど、これは書かずにはいられないな、と。

これからちょっと保吉ものを読みあさるかもしれないなぁ。青空文庫だから、Amazonでも0円でKindle版が手に入るので、みなさんもどーぞ。

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