今、何時だろう? と思って、ふと時計(アナログ)に目をやると、あ、今、秒針が止まってた……。なんて、思ったこと、ありますよね?
子供の頃、初めて腕時計を買ってもらって、うれしくて、何度も何度も時計を見ちゃったていう思い出があるんですが、そんなときに、ん? この時計、今、秒針が止まってなかった? 自分が見てないときサボってる? って思ったことがちょくちょくありました。
なんだろ? なんか、見てないと必ずサボってるんだよなぁ。なんてことをいっても、大人は「そんなことない」って笑い話にしちゃうんだけど。
少し、大人になって、中学生ぐらいになると「ある、ある」「わかる、わかる」という仲間が現れて、「それって、何かの陰謀?」「たぶん、宇宙に存在するものの仕業」みたいな厨二病的な話になるんだけど……。
自我が目覚めて(あまり関係ないけど)、自分のコミュニケーションが取れる範囲、社会が広がれば広がるほど「ある、ある」っていう人が増えるんですな。
話が、長くなったけど、それって、何?
それが「クロノスタシス」という現象だということは、おとなになって知りました。そして、ハッキリと言葉として覚えることができたのは、きこの帝国っていうバンドの「クロノタシス」って歌があって、その中でもこの現象の話をしていて、もう忘れることのない言葉になりました(つまり、初耳ではないのですが)。
クロノタシスという現象は、アナログ時計に目を向けたとき、その瞬間、秒針の動きが、最初だけ通常の1秒間より長く感じるというもの。
これは、人間の眼球がサッカード運動(視点が大幅に移動するような動き)をしたときに、わずかに(脳の)時間の認識が伸びるんだとか。時計を実際よりも長く見ていたような錯覚が起きるというのです。
これには、深いわけというか、脳と目の関係上、重要な役割を担っているもののようです。
人は、ある一点を静止して見ていても、眼球は常に動いており、その像を脳に送ります。そうじゃないと、視覚情報が連続して再生されませんからね。逆にいうと、常に眼球が動いているから、脳は像を常に再生し画像を認識しているということです。
で、その眼球の動きが大幅に移動したときに(小さい動きよりも時間が掛かる)、脳は眼球の動きにかかる時間と認識するまでの時間に普段よりも大きな差が生じることから(現実には、ほんのわずかの時間の違いだが)、そういった錯覚が起きるんだとか。
ま、普段はこの時間的な差は、意識できるほど感じるようなものではないが、時計のような規則正しい動きと、その経過時間を明らかに感じることができる動きを見たときに、その違和感を感じやすいというのです。
つまり、時計が見ていないときにサボっているように見えるのは、ごくごく普通の現象のなのです。子供の頃、笑ったおとなたちに、クロノスタシスについて教えたいですな。