熱殺蜂球と窒息スクラム

スズメバチは、時々ミツバチを襲い、巣を全滅させることがある。ミツバチを肉団子にして幼虫のエサにする。

というのは、子供の頃に聞いたことがあった話だった。

それで、ミツバチはやられっぱなしなの? っていうことが気になったのだが、実はミツバチは集団でスズメバチを囲んで、みんなの熱量で高温に弱いスズメバチを倒すこともあるという話も聞いたことがあった。

そんなミツバチたちの反撃の必殺技に、なんと名前があったのだ。

で、それって、何?

それが初耳の言葉。答えは、「熱殺蜂球」だった。なるほど、蜂球の熱で殺すのね。

というわけで、熱殺蜂球について調べてみたら、なんだがいろんなことがわかった。熱殺蜂球以外にも「窒息スクラム」という技もあった。

ただし、ちょっと複雑。

というのも、熱殺蜂球の技を使うのはミツバチの中でもニホンミツバチのほうで、セイヨウミツバチにはできない技だという。

熱殺蜂球は、ニホンミツバチよりも高温に耐えられないスズメバチの生態を利用し、集団でスズメバチを囲み、筋力で羽を振るわせその熱で蒸し殺す。最初に飛びかかるニホンミツバチは犠牲になる可能性もあるが、熱殺蜂球はわずか数分でスズメバチを倒すという。

ところが、セイヨウミツバチはこれができない。セイヨウミツバチはニホンミツバチほど熱に強くないのがその理由だという。ということで、セイヨウミツバチがオオスズメバチに襲われた場合は、巣が全滅してしまうこともあるのだそうだ。

ただし、セイヨウミツバチもモンスズメバチ程度の小さい種類のスズメバチに対しては、ニホンミツバチと同様に、スズメバチを集団で囲むという。それは、熱ではなく、スズメバチの細い腹部をめがけて取り囲み、圧迫させることで呼吸困難に陥らせ窒息死させるという「窒息スクラム」という方法を取るそうだ。窒息スクラムは、小一時間程度の死闘になるという。

そして、日本でミツバチを襲うスズメバチは、オオスズメバチ、キイロスズメバチという種類がメインとのこと。なので、国内ではセイヨウミツバチにとってスズメバチは、大敵であり、ひとたび襲われるとなすすべなしという。昔から生息するニホンミツバチのみ、スズメバチの攻撃に対する反撃方法を持つというのが、遺伝学的にも面白いところではないだろうか。

ちなみに余談だが、スズメバチがミツバチを襲うのはあくまでも幼虫のため。幼虫は肉食であり、スズメバチはさまざまな虫を肉団子にして幼虫に与える。成虫はそれらの虫を食べずに、終齢幼虫が分泌する栄養液を餌にしている。終齢幼虫が巣にいない場合は、花蜜や樹液を食べることもあるが、ミツバチのようにハチミツを作りためることはない。

ハチの生態は、本当に不思議だ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする